Love Story's+α
「お父さんとね、やはり今日みたいなこんな夕暮れ『一番星見つけた』なんて言いながら歩いてたの。お父さんは寂しそうな顔をしてたから子供心に慰めようとわざとはしゃいでたのかも知れなかった。その時いい匂いがして見たらコロッケ屋さんで…買って貰って『美味しいね』なんていいながら駅に向かってたの。ホームに上がったらそこには田舎のお爺ちゃんお婆ちゃんがいて…お父さんが『直ぐに迎えに行くからな。いい子にしてるんだぞ』『うん。お父さん』『うん?』『コロッケ美味しいから食べて」って残りのコロッケを渡したの。お父さん嬉しそうに『ありがとう』って。私達は夜行電車に乗ってお父さんはずっと見送っていた。私も窓から見えなくなるまで手を振っていた。その頃、お母さんが事故で意識不明でお父さんは仕事と病院で私の世話が出来なくなり田舎に預けられたの。お父さんが迎えに来てくれたのは私が中学の時。お母さんはが亡くなって。それから二人の暮らしが始まって。二人ともあまり料理が出来なくてよくコロッケ食べてたの。飽きもせず。だからコロッケは思い出の味なのよ」
「そうだったのか」
「華もコロッケ大好き」
家に着き玄関を開けて
華が
「お爺ちゃ~ん。今晩はコロッケだよ~」
*END*
【800文字で三題噺:一番星、コロッケ、夜行電車】