Love Story's+α
儚いもんだな。
一時間ちょいであっさりと灰になる。
見上げた煙突からは煙がモクモクと。
『人の一生なんてたかが知れてる』そう豪快に笑った爺ちゃんの顔が見えるようだ。
一代で財を成し得た立志伝中の爺ちゃん。
『人生は太く短く。金はあの世には持っていけん』と俺の親父達に財産を生前分与して後は派手に使った爺ちゃん。
でも死に金は使ってなかったよな。
さっきの葬式であれだけの人達が焼香に来てくれて、皆が口々に『世話になった。助けられた』って泣いていた。
俺達にはそんなこと一言も言わずに。
婆ちゃんが『男は黙ってなのよ。さすが私の惚れた男』って嬉しそうに泣き笑いの顔でのろけていた。
そうだな。
爺ちゃんは婆ちゃんを何より大事にしていたもんな。
最後の最後まで婆ちゃんの手を握って『約束破ってすまん』って。
婆ちゃんに聞いたら『一生守ってやるから結婚してくれ』ってプロポーズしたって。
爺ちゃんが目を瞑った時、婆ちゃんが『嘘つき』って泣いてたぞ。
婆ちゃん今でも爺ちゃんに惚れてんだな。
何だか羨ましい。
「此所にいたの?お爺ちゃん戻ってきたわよ」
お袋に呼ばれて中へ
そこには骨になった爺ちゃんが
「案外綺麗なんだな」
不謹慎とも取れる俺の言葉に婆ちゃんは笑いながら
「当たり前よ。最高の男だったんだから」
「うん」
骨壷に爺ちゃんを入れて婆ちゃんは大事そうに抱き抱えてる。
そして
「ば、婆ちゃん!」
骨の欠片を口に含み
「甘いね。粉砂糖みたいに溶けちゃったよ。貴方これから私の中で生きて下さいね」
甘い筈なんかないのに。
爺ちゃん、本当に男として最高に幸せだよな。
こんだけ婆ちゃんに愛されて。
「当たり前だ!婆さんがわしに惚れ抜いてるんじゃ」
自慢気な声が聞こえる。
空を見上げるとまるで粉砂糖のような雪が降ってきた。
爺ちゃんまたな。
グッバイ!
*END*
【800文字で三題噺:煙突·派手·粉砂糖】