Love Story's+α
背中の真ん中くらい迄あった髪が…切られていく。
「…何かあった」
「失恋したんです」
苦笑いを浮かべながら
「笑えるでしょう。今時、失恋したからって髪切る女がいるなんて」
「……」
「笑って下さっていいですよ」
「馬鹿な男だな」
「えっ?」
「こんな可愛い子を振るなんて」
「…お上手ですね」
再び鏡越しに視線を合わせる。
私の髪は、段々 短くなって…
「相手の人は知らないんです」
「……」
「私の…片思いですから」
「告白もしないで失恋?」
「その人…彼女さんと…凄く優しい笑顔で…私の入る余地はないなと…なら、早めに諦めた方がいいから…だから、イメチェンして、新しく出直そうかと」
「無理に笑わなくていいよ」
「えっ?」
「ふっ切れてないでしょう。泣きたいなら泣いた方がすっきりするよ」
驚いた。
よく見てる。
やはり、仕事がらなの。
「…じゃあ、胸 貸してもらえますか?」
悪戯っぽく聞く。
「俺でよければ…」
「ハハハ…ありがとうございます。でも、遠慮しときます」
「何で?」
鏡の中の眉毛が上がった。
「…彼女さんに悪いです」
「…彼女なんていないよ」
「そうなんですか?」
「信じてないでしょう」
「い、いえ」
フッと笑い、
「じゃあ流しますので、シャンプーブースへ」