つめたいハートに火をつけて
カナといつも待ち合わせに使っている、コーヒーショップに到着して、カフェラテを注文する。
渡されたカップを片手に、座席の間で目的の人を探してキョロキョロしていると、馴れ親しんだ自分を呼ぶ声が聞こえる。
声の主を探し当て席に向かうと、カナが微笑んで腰掛けていた。
「アヤ~、久しぶり~。元気だった~?」
私がカップをテーブルに置いて、腰掛けると同時に訊ねてきた。
まだ温かいカフェラテで喉を潤し、一息入れたところで口を開く。
「うん、元気だったよ。カナも元気そうだね」
カナもカップを傾けて、楽しそうにしている。
しばらく、互いの近況報告をしていたが、BARへ向かうなら、もうそろそろここを出ないと、終電に間に合わなくなってしまう。
私もカナも、お酒は好きな方で、気が付くといつも終電ギリギリまで飲む事が多かった。
「で、カナ。行きたいお店はどこにあるの?」
早速、お店について問い掛けると、所在地等を教えてくれた。
「ここから近いんだよ。外がね、ちょっとクラシカルでいい感じなの。
最近オープンしたみたいで、店の前を通るたび、気になってたんだぁ」
カナが直感で感じる店選びには、飲食店に関わらず何故かハズレが少ない。
二人で飛び込みで入ったお店でも、二人の好みに合ってお気に入りとなった所がたくさんある。
「またまだ積もる話もあるし、続きは場所を変えてからにしようよ」
そう提案すると、カナは賛成してくれたので、移動する事にした。
カナの案内でお店の前に辿り着くと、周りのお店よりちょっとライトダウンされていて
『BAR DAYBREAK』
って看板がでてる。
「ここ?」
「そっ。よさげな感じだよね~。中はどんなんか、スッゴく楽しみ」
カナが扉に手をかけて振り返る。
二人で扉をくぐった先は、柔らかいオレンジ色の照明に照らされて、こじんまりとしたスペースが広がっていた。
金曜の夜に皆、考える事は同じなのか、店内は混雑していた。
私達に気が付いたウェイターさんが、にこやかに出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
「そうです」
そう答えると、ウェイターさんは少し申し訳なさそうに口を開く。
「あいにく、テーブル席はうまってまして、カウンターならご案内出来ますが、いかが致しますか?」
カナが私の顔をうかがう。
「アヤ、カウンターでも良いよね?」
「うん」
私達のやり取りに、ウェイターさんは安堵したように再び笑みを返してくれた。
「では、こちらへどうぞ。段差がありますので、足元にお気を付けください」
そう、カウンターの方へ案内してくれた。