三日月ギター
バタン。
ん?
今何か音がしたような?
大方の予想がついているものの、当たっていませんように!という望みを持ちながら、閉じていた瞳を恐る恐る開く。
土から生え始めた緑がちらほら見える地面に、美しく倒れていらっしゃる王子様。
…また、何をしてもお似合いで。
頓珍漢なことを考えて、現実逃避してみた。
今はまだ時刻が早いから人が通らないが、もう少しすればここも学校に通う小人が使うだろう。
そうなれば騒がしくなるのは必然だ。
生徒会のシゴト片付けたいから、早く出たのにぃ、とぶつぶつ言いながら億劫そうに携帯を取り出した。
連絡先を見つけて電話を数コール鳴らすと可愛らしい声が聞こえる。
『はい、日向です』
「あ、みちるさん?小春です」
事情を説明すると、車でこちらに向かってくれるそうでありがたい。
…思うけど、みちるさんって人を疑うことが欠けているような。
まぁ、それで私もみちるさんのお世話になることになったから何ともいえないけど、むしろ恩返しをしなくては。
そう、鶴のように!
王子様を放って、青い空を見ていた私は気づかなかった。
鳥居の奥で息を潜めて、私たち2人を伺う人影に。