三日月ギター
そして私は気づかなかった。
「うかつだった」
「ん?どうした、小春」
あの後、王子を家の離れに寝かせて、みちるさんに任せ学校に来た。
今は放課後の生徒会役員の会議が終わり、室内がガランとしている。
ため息をつくと、部屋全体が飲み込んだように広がった。
頭が痛い…。
自分のお人好しさにこれ程頭を抱えたことはあっただろうか。
何故、行き倒れの仮称・王子を家に持って帰ってしまったんだろうか。
あの時、119番に連絡して救急車に持って行ってもらえればいいものを、わざわざ自分のテリトリーにあげてしまった。
うーんうーん、悩んでいる私の正面で怪訝そうに座っている私の友人・和(ちなみにこれで「なごみ」と読む)が机にティーセットを広げているのを見つつ、自分の失態を未だに悔いていた。
「まぁ、そんなに眉間にしわをよせては美人がだいなしよー」
ささ、これでも飲んでリラックスしてちょうだい、と和が奥ゆかしくティーカップを私に差し出した。
和さん、なんだか母親のような口調になっちゃいませんか?
「ということがあったんだよ」
「またすごいもの拾ったねー」
和の入れたお茶を飲んで一息ついたところで、今朝起きた出来事を説明していた。
「ま、要するに小春は彼を放っておけなかったんでしょう?
同じなんでしょう、自分と彼が」