三日月ギター
小春らしいね、そう言って和は醤油煎餅をボリッとかじった。
和の言う通りだった。
確かに私は見捨てて置けなかったのだ、……私と似た境遇の彼を。
ことしの春はとても寒い。
雪が溶けてもいい頃に上乗せしたように、たんまりと雪が降ったせいだとテレビで気象予報士が言っていた。
4月も終わるというのに、ストーブはまだ活躍しそうなくらいに。
「そろそろ、王子起きてるかな?」
「ん?それはないよ。だって
王子は姫の愛あるキスで起きるのが一般常識でしょう」
にっこり、いやニヤニヤ顔の親友がなんとも憎たらしい。
「…和さん、真面目に話をして下さい」
「私は至って正論を述べました」
ど・こ・が・だ!
渾身の睨みをきかせる私を横に、楽しそうにお茶の香りを吸い込む彼女にはまったく効かなかった。