キミの知らない物語。【完】
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「――うっす」
――午後9時半。
昨日ぶりに入った悠也の部屋は、1日しか経ってないから当たり前なんだけど、何も変わっていない。相変わらず汚い部屋。
「……げ、なんだよ陽子。こんな時間に」
彼は心底嫌そうな顔をして、読んでいた漫画から顔をあげた。
「げ、って、なに。超失礼じゃん」
唇を尖らせ、悠也の隣、ベッドに腰かける。菜乃子にはそんなこと言わないクセに。
というか、物が散乱していて、そこ以外に座れる場所がない。
「お前勝手に入ってくんなや」
「だっておばさんが良いって言ったもん」
言えば、あのくそババア、と、悠也は眉を顰めた。そんなにあたしが来るのが嫌か。バーカ。
「でも今日はさ、大事な大事な伝言があってきたんだよ」
「なんだよ」
大したことじゃあないと確信しているのか、悠也は再び漫画本へと視線を移した。
……なんか、ムカつくな。
あたしが今から言うこと聞いたら、驚くくせに。