キミの知らない物語。【完】
……てゆうか、わざわざ菜乃子からの伝言を伝えに来てあげてる優しいあたし。
黙ってれば、それで終わりなのに。
黙ってれば、菜乃子と悠也が誕生日に会うことも無くなるかもしれないのに。
上手く行けば、二人は別れるかもしれないのに。
――だけど。
それが出来ないのは、菜乃子も悠也もあたしにとって大切な人だから。
失いたくないから。
ほんと、感謝してほしいよ。
「……菜乃子からの、伝言」
「ん」
「もうすぐあんたの誕生日でしょ?」
「あー、そうだっけ」
悠也は壁に貼られたカレンダーへと視線を移し、もうそんな時期か、と年寄りくさく呟く。
「……それでね、」
「誕生日プレゼントなら気にすんなって言っとけ」
「そうじゃなくて、」
――そうじゃなくて。
次の言葉は喉の奥でつっかえたように出てこない。