キミの知らない物語。【完】
「……そうじゃなくて、なんだよ?」
「……菜乃子が、……“家に泊まりにこないか”って」
ごくりと唾をのみこみ、ようやく言葉を吐きだせた。
「……は?」
瞬間、悠也の口からは間抜けな声が漏れる。
驚いたように目を見開き、バサバサっと、漫画本は彼の手から落ちた。
「……え、なにそれ?」
悠也は引きつった笑みを浮かべていて、いつもの余裕たっぷり自信過剰の悠也はどこへやら。
口をパクパクさせながらきょろきょろと部屋内を見回していて少し笑える。
――あたしじゃ、そんな表情させられないね?
「……菜乃子の親、親戚の結婚式でいないんだって」
「え、……あー、……まじ?」
「まじ」
「――は、マジ!?」
「マジだって」
「――それって、……そういうこと?」
「……うん」