キミの知らない物語。【完】



そんな言い訳を並べつつ、どんどん卑屈になっている自分が心底嫌になる。



「――おはよう」



学校に着くと、菜乃子は既にきていて、引きつった笑みをあたしに向けた。



「――よ、陽ちゃんっ、どうしよう、いよいよ今日だよ」



半泣き状態の彼女は長い髪の毛を揺らし、あたしに抱きつく。



「もう! 今更がたがた言わないの! 菜乃子が決めたんでしょ?」

「そ、そうだけど……」



今から緊張してきた……。と、菜乃子は顔を真っ青に染めた。



「ふ」



それがなんだかおかしくて、笑みを零した後に、よしよしと彼女の柔らかい髪の毛を撫でてあげる。



「大丈夫! 悠也、すっごい菜乃子のこと好きだから、大丈夫!」

「大丈夫じゃないよ~」



――大丈夫。


今日で、二人の絆はもっと深まる。


悠也は菜乃子のものに。


菜乃子は悠也のものになる。



< 17 / 58 >

この作品をシェア

pagetop