キミの知らない物語。【完】
そんな言い訳を並べつつ、どんどん卑屈になっている自分が心底嫌になる。
「――おはよう」
学校に着くと、菜乃子は既にきていて、引きつった笑みをあたしに向けた。
「――よ、陽ちゃんっ、どうしよう、いよいよ今日だよ」
半泣き状態の彼女は長い髪の毛を揺らし、あたしに抱きつく。
「もう! 今更がたがた言わないの! 菜乃子が決めたんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
今から緊張してきた……。と、菜乃子は顔を真っ青に染めた。
「ふ」
それがなんだかおかしくて、笑みを零した後に、よしよしと彼女の柔らかい髪の毛を撫でてあげる。
「大丈夫! 悠也、すっごい菜乃子のこと好きだから、大丈夫!」
「大丈夫じゃないよ~」
――大丈夫。
今日で、二人の絆はもっと深まる。
悠也は菜乃子のものに。
菜乃子は悠也のものになる。