キミの知らない物語。【完】



そうしたら、たかが幼馴染みのあたしが付け入る隙なんて、微塵もなくなるだろう。


そうなれば、きっと、あたしも諦められる。


悠也の部屋に勝手に出入りするのもいよいよ控えないとな。



「……や、やっぱさ、陽ちゃんも今日泊まりに来ない?」

「何言ってんの」

「だってだってだって!」



泣きそうな顔をする菜乃子。


呑気なもんだ。


あたしはずっと、ずっとずっと、悠也を奪う機会を狙ってたというのに。



「……ほんとに菜乃子は、おっとりで、バカで、鈍いよねぇ」

「へ? なんで?」

「ううん。こっちの話」



いえば、彼女はキョトンとして、へらりと笑った。


――大好きだよ、菜乃子も、悠也も。


――だけど。


どうしても、どうしても。



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