キミの知らない物語。【完】



今日だけは。


どうしても。



今にでも走り出して、悠也に、

『ずっと好きだった。菜乃子のとこにいかないで』

そういってしまいそうだから。



――だから。



二人を見てるのは辛いから。


なるべく、関わらないように。


菜乃子にも近付かないようにと、さりげなく避け続けた。


きっと、今あたし、すごく嫌な子だから大好きな菜乃子を傷つけてしまうようなことを言ってしまう。


やっと放課後になり、ぎこちない様子の菜乃子と悠也が二人で教室を出る姿を見送った後、学校の体育館の倉庫の中に身を隠した。



――今日はここにいよう。


家に帰ったら嫌でもきっと、菜乃子の家に泊まりに行く準備をしている悠也を窓越しに見つけてしまう。


お隣に上がり込んで、無理にでも彼を引き留めてしまう。


だから、ここでぐっとこらえよう。



「――よしっ!」



ぱんっと両頬を叩き、気合を入れる。

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