キミの知らない物語。【完】
ムンとしたクーラーの設置されてない室内独特の暑さの中で、言い争うのも面倒になったあたしは、
ケチ、と小さく言い捨てて携帯ゲーム機から目を離さない悠也が座るベッドの隅に腰かけた。
そんなに面白いのだろうか。あたしを放っておくくらい。
「……ね、悠也」
「……ん」
ワンテンポ遅れて返ってくる幼馴染の素っ気ない返事。
あたしがいることに何の意識もしてない。……一応ここ、ベッドの上なんだけど。
「眠いから寝てもい?」
言うも、悠也からの反応はない。拗ねて、彼にもっと近寄りとんっと肩と肩をぶつけ合わせた。
夏のせいの薄い服の布越しに触れて、ただそれだけであたしはドキドキしてるのに、悠也は特に気にすることもなく面倒くさそうにあたしと少し距離をとる。
ゲームを邪魔されたくないのか、勝手にしろとでも言わんばかりにしっしと手を振った。
……はいはい、勝手にしますよー。
いそいそとベッドに潜り込むも、悠也からの反応はやはり何も無い。シーツからは悠也のお風呂上がりの甘い匂いがする。寝れる気もしないし、眠る気もない。