キミの知らない物語。【完】




「――つかお前、自分ちで寝ろよ」




そのまま会話のないまま、ぼーっと部屋の天井だけを見続けていたあたしに、ゲームに飽きたのかようやく悠也が話しかけてきた。




「えー?」


「襲うぞ」


「ふ」


「何笑ってんだよ」




面倒くさそうに言う悠也。


あたしはケラケラと笑いながら体を起こす。




「その気も無いくせにー?」




言えば、彼は口の端を上げ、悪戯っぽく笑った。




「さあ? 油断してるとわかんねえよ?」


「バーカ」




――キミに恋をしていた。


幼馴染みの、キミに。




「あ、冗談と思ってんな?」




ぐいっと顔を近付け言う悠也。


思いがけず近くなったその距離に、息が詰まりそうになる。ていうか詰まった。




「……い、いい加減にしないと、菜乃子(ナノコ)に言うけど?」




それでもなんとか平静を装ったあたしは、彼の額を人差し指と親指で思い切り弾く。


――びっくりした。びっくりしたびっくりした。


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