キミの知らない物語。【完】
どうしたの、と続けるには躊躇われて、半端なままの声が雨にかき消された。
「……2時間くらい前に、お前の母さんから連絡来て、“陽子がまだ帰ってない”って」
心配かけていたことに、胸が痛む。
「で、菜乃子と探してた」
「……え」
――台無しに、した?
……あたしが。あたしのせいだ。
悠也も、なんだかんだ言って菜乃子も、楽しみにしてた悠也の誕生日を。二人の計画を。
あたしが潰した。壊した。
そうならないようにと隠れていたのに、裏目に出た。いろんな人に迷惑かけた。心配させた。
「――っごめ……っ」
「――陽ちゃんっ!」
――瞬間、後ろから聞こえた声に振り向けば、雨でびしょぬれの菜乃子が立っていて、唇を噛んでこっちを睨んでいる。
「……菜乃子……」
綺麗な黒髪は濡れて、細い肩が小刻みに震えていた。
――怒ってる。絶対、怒ってる。