キミの知らない物語。【完】
だって、だって……。
菜乃子、あたしのせいでびしょぬれになって……。
泣いて、叩いて……。
頭の中はぐちゃぐちゃで、再び視界がぐにゃりと歪み鼻の奥がツンとした。
「……陽ちゃん、いなくなっちゃ……かと、思った……!」
涙でぐしゃぐしゃな顏。
「……ふ、菜乃子、ブッサイク」
「陽ちゃんだって……、雨にぬれてヘンな前髪になってるよ!」
「あんたもね」
二人顔を見合わせて、笑う。
――あたしは、バカで最低な女。
だけどね。
一番に、二人の幸せを願ってるよ。
「――たく」
そこで悠也が二人の間に割って入る。
「お前は家で待ってろっつったろ」
それから菜乃子に、溜息と共に言葉を吐きだした。