キミの知らない物語。【完】
「……だって、佐野くんからメール貰って、心配でいてもたってもいられなくて……」
菜乃子はしゅんとして下を見る。
……ああ、さっき悠也は、菜乃子にメールを打っていたのか。
「……あ、そうだ」
突然あたしは思い出し、カバンの中から“それ”を取り出す。
「――これ、誕生日プレゼント。うちの母親から」
お母さんから預かっていたマグカップを、悠也に手渡した。
「えー、ちょっとー。今渡されても雨にぬれて困るんですけど」
そう言って眉を顰め、空を指差す悠也。
「あ、そっか」
「それにもう、誕生日終わっちったっしなー。……誰かさんのせいで」
悠也は言いながら横目であたしを睨み、携帯の画面を見せる。
午前0時半。
「……うわ、ご、ごめん」
それに言い返すことはさすがに出来ず、あたしは苦笑いを浮かべる。
「――それじゃ、うん、あたしはもう大丈夫だから」
それから足を止め、二人を交互に見る。