キミの知らない物語。【完】
「――あんたたちは菜乃子の家で、ラブラブでもイチャイチャでもなんでもやんなよ、ねっ!」
「わっ!」
菜乃子の背中を思いきり押し、悠也の方へやる。
華奢な彼女をしっかり受け止めた悠也は、怪訝そうにあたしを見た。
「……邪魔して悪かった! あたし、もう一人で帰れるからさ。二人も帰んな」
ひらひらと手を振り、彼らに背を向けた。
――あ。
言い忘れていたことを思い出し、首だけを振りかえる。
「――ちゃんと避妊はするように。……あと、菜乃子は初めてだから、優しくしてやってよね! それから――」
「よよよ陽ちゃんっ!」
顔を真っ赤に染めた菜乃子が慌ててあたしの名前を呼んだ。
「……ふ、あはは」
笑い声を響かせ、菜乃子の方へ向き直す。
「それから、ごめんね、あと、ありがと」
「陽ちゃん、今日の詳しい話はまた後日話してもらうからね!」
「わかってるってば」
「ほんとーに、もうこんなことやめてね? 菜乃子ほんとに心配したんだから」
「悪かったってば、ほら、もう遅いからさっさと戻りなさい!」
「陽ちゃんは……」
「送るとか言わないでね? あたしは1人で平気だから」
でも、と食い下がる菜乃子に背を向けて、歩き出した。
「じゃあまた学校で!」
あたしはもう振り返らない。