キミの知らない物語。【完】
4
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「……佐野くん」
ボーっと、陽ちゃんの歩いて行った道を眺めている佐野くんに声をかける。
陽ちゃんの姿はもう見えないのに。
とっくに帰ってったのに。
……ちょっと妬けちゃうなぁ。
「……あ、わりい、菜乃子」
佐野くんはハッとしたように言って、菜乃子に自分の着ていたパーカーをかけてくれた。
「ごめん、濡れて……、雨なのに」
申し訳なさそうに言う佐野くん。
「ふ、佐野くんのパーカーも濡れてるから、意味無いよー」
笑って言って、びしょぬれのパーカーを指差す。
「……だな。わりい」
佐野くんはもう一度言って、菜乃子の頭をくしゃりと撫でた。
――佐野くんの大きな手が、大好き。
「――さ、帰るか」
菜乃子の手を引き歩き出す佐野くん。