キミの知らない物語。【完】
『あのね、佐野くん』
『おう』
『今日はね、話があるんだよ。すっごく大事で真面目な』
言えば、佐野くんは眉を顰めた。
その表情に笑いをこぼす。
嫌いだもんね、佐野くん。
“真面目”とか、“大事”とか。
でもね、難しくはない話だよ。
単純で、簡単な話。
『――別れようか』
絞り出すように声にした。怖くて顔はあげられない。
『――は?』
しばらくたって、佐野くんは間の抜けた声を出した。