キミの知らない物語。【完】
『……お別れ、しようか』
『……』
よっぽど予想外の話だったのか、呆気にとられて菜乃子を見る佐野くんがおかしくて、菜乃子はまた笑いを零す。
――大丈夫。
昨日何度も、ベッドの中で練習した。
“お別れの言葉“
“さよならの言葉”
泣かないように。
最後も、いつもと同じに笑えるように。
『……なんで?』
佐野くんの声は怖いくらい普段通りで。
むしろいつもより冷たくて。
ぞくりと背中に緊張が走り、びくりと肩が跳ねた。