キミの知らない物語。【完】



『……俺、なんかしたか?』



――したよ。


佐野くん、菜乃子にいっぱい良くしてくれた。



『……佐野くんは、いつも優しかったよね』



好きだよ。


大好きなんだよ、佐野くん。


“別れようか”


そう自分から口にした今でさえも、大好き。



『……じゃあ、なんで』



彼の声は微かにだけど震えていて、

『……俺、今日誕生日なんだけど。ドッキリ?』

自嘲的な笑みを浮かべ、佐野くんは言う。



『ドッキリじゃないよ。――サプライズ』



別れてあげる。


今日は佐野くんの誕生日だから。


特別に、別れてあげる。



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