キミの知らない物語。【完】
キミならそう言うと、思ってた。
『――探しに、行こうか』
椅子に掛けられていたカーディガンを羽織り、立ちあがる。
『……でも、』
『菜乃子が心配なの!』
笑って、彼の手を引き部屋を出た。
それ以上佐野くんは何も言わずについてくる。素直でよろしい。
外はやっぱり雨が降っていて、こんな中陽ちゃんは何してるんだろうと不安になる。
――きっと、菜乃子のせいだ。
『――いや、やっぱ菜乃子は家にいろ』
『え? なんで?』
玄関まで行ったところで、佐野くんが不意に言った。
『……なんで?』
『もう夜だし。危ねえだろ』
――ほら、またそうやって。
『……やだ』
『は?』
『菜乃子も探す』