キミの知らない物語。【完】
――キミは思わせぶりで、残酷。
佐野くんを押して、外へ飛び出す。
――雨が強い。
『ばか菜乃子! 待ってろって!』
『駄目だよっ!』
待ってなんかいられないよ。
『菜乃子も探す』
これは譲れない。
だって、心配。
陽ちゃんが心配。
陽ちゃんがいなくなったの、菜乃子が意地悪したせいかもしれないし。
菜乃子の真剣さが伝わったのか、佐野くんはハアッと深いため息を漏らした。
『……わかった。けど、お前は家の近くだけにしろよ』
言う佐野くんに、コクコクと頷く。
『――じゃ、俺、探してくっから』
言うと、一目散に雨の中を走りだした。
『傘はぁっ!?』