キミの知らない物語。【完】
慌てて言えば、
『いらねえ!』
雨の音に混じって、返ってきた。
――ほら。
……もう。
陽ちゃんは、タイミングが悪いよ。
もうすぐで菜乃子と佐野くん、別れたのに。
陽ちゃんにチャンスが回っていったかもしれないのに。
傘をささずに、菜乃子も雨の中を歩きだす。
バカだね、陽ちゃん。
ほんと、ド阿呆だよ。
もっとバカなのは佐野くんだけど。
一番かわいそうなのは、菜乃子だよ。
どんどん雨にぬれていく。
目にそれがあたり、涙みたいに流れてく。
――バカ。
佐野くん、キミが一番大事なのは、――陽ちゃんでしょ?