キミの知らない物語。【完】
「――菜乃子、佐野くんのこと、嫌いになった」
佐野くんなんか、思いきり傷ついちゃえ。
彼は呆気にとられたまま呆然としている。
今まで、菜乃子と、あと、陽ちゃんも傷つけたでしょ。二人分、傷ついて。
「……だから、……別れてねっ」
佐野くんに背を向けて歩き出した。
――ほら。
この雨、すっごいちょうどいいじゃん。
菜乃子が泣いても、隠してくれる。
今日はお別れ記念日でしょ?
「……っ」
バカだね、菜乃子も。
最後までズルイ子でいればいいのに。
嫌われ役をかってでて、最後に綺麗な嘘をついてあげるなんて。
……佐野くんなんて、せいぜい陽ちゃんと幸せになっちゃえよ。
まあ、時間はかかると思うけどね。
だってあの二人、すっごい鈍いもん。