キミの知らない物語。【完】




菜乃子はズルくてで可哀そうな子だから、陽ちゃんみたいに取り持ってあげれないよ。


二人には教えてあげない。


お互いのキモチ、菜乃子だけが知っている。


絶対、教えてあげないんだからね。


だって、悔しい。


――悔しい。


陽ちゃんに敵わない。


あんなふうに、佐野くんに想ってもらえる陽ちゃんが羨ましい。


陽ちゃんになりたい。


――佐野くんは菜乃子を追いかけてこなかった。


……答え、見つかったんでしょ。


家に帰って、佐野くんにメールした。



『今日はごめんね
荷物、月曜日学校に持ってくよ』



返信はなかったけど、それでいいんだ。


ベットに潜り込み、菜乃子は一人、泣いた。



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