キミの知らない物語。【完】




「それに佐野くん、ゲームばっかで菜乃子に構ってくれないの。ほら、この通り」




菜乃子は肩を竦めて困ったように言うけれど、そんな顔も幸せそうに見える。


……でもね、悠也のそんな駄目駄目なところは、あたしの方がよく知ってるよ。


じわりじわりと胸の奥で疼く汚い嫉妬を押さえこんで、無理に笑顔を作った。




「……なに言ってんの。邪魔者は帰るって。二人で楽しんで?」

「え、陽ちゃん……っ?」




――いれるわけない。


菜乃子に言って、悠也の部屋を出た。


悠也と菜乃子。彼氏と彼女。幼馴染みで親友のあたし。


いれるわけないじゃん。


あたしは悠也が好きなのに。


――好き合ってる二人の中で平気なほど、あたしは強くないよ。



菜乃子に優しくしてもらえる資格があるような人間じゃないんだよ、あたし。




***




「――陽ちゃん」




昨日の日曜日が終わり、憂鬱な月曜日の昼休み、いつになく真剣な顔で、菜乃子はあたしの名を呼ぶ。



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