キミの知らない物語。【完】
意地っ張りで強がりのあたしとは正反対。
そんな可愛い可愛い彼女に、あたしが敵うわけがない。
思い描いていた悠也へのプレゼントを頭の中からかき消した。
……だって、どんなプレゼントをあげたって、菜乃子のそれには敵わない。
「……でもさー、ちょっと意外。あんたたち付き合って、……えーと、まだ半年? でしょ?」
「え、そ、そうかな、早いかな……」
「わかんないけど……菜乃子はもっと慎重なのかなって思ってたから」
「……佐野くんなら、いいかな、って、思ったの」
「……そっか」
ちょっと不安を含んでいるけれど、凛とした強い瞳と幸せそうな菜乃子の笑顔に、もうこれ以上何も言えなくなった。
――出来るなら全力で止めたい。
菜乃子の家へ向かう悠也を足止めしたい。
無理にでも彼をあたしの家に閉じ込めてしまいたい。
――なんて、最低でしょ、あたし。
こんなんだから菜乃子には敵わないんだよ。
「……もう、決めたんだ?」
訊けば、菜乃子はぎこちなく頷く。
「そっか。頑張れ」
――応援するよ。大切な二人だもん。