深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
1. 鎖の重み、今も
血のように紅いルージュ、一分の隙もなく施された化粧。
緩く巻かれた長い髪、全身を包む香水の匂い。
―――私を見下したような、冷たいまなざし。
酒臭さでいっぱいの汚れた部屋に獣のように鎖で繋がれたままのこども。
真っ暗な部屋の、カーテンもない窓から差し込むのは寂れた街灯の光だけ。
あと少し発見が遅かったら、死んでいたかもしれないこども。
でも、それでもかまわないと思っていたこども。
それでもこどもは、母を求めて泣いていました。
愛されたい、と希っていました。