深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
(………どうしよう)
少し遅い朝食のあと、私たちは出かけることになった。
いざ着替えようとして私はあることに気づく。
「服…」
そう。
今手元にあるのは会社用のスーツとルームウェア、芦谷さんから借りているパジャマ代わりのスウェットだけで、外出用の私服がない。
何を着るべきか悩んでいると、控えめにドアをノックする音がして芦谷さんが顔をのぞかせた。
「―――すっかり忘れてたな。んじゃ今日は環の服買いに行くか」
私が事情を話すと彼はそう言うと私の髪をくしゃりと撫で、部屋を出ていく。
くしゃりとされたところに手を伸ばして、私は小さく笑みを浮かべた。