深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
正直、おしゃれに対する恐怖心がないわけではない。
でも不思議と、芦谷さんがいると思うとその不安がなくなっていくような気がして、思わず私も笑った。
「かわいいなぁ、環は」
「…!そんなのいいですから早く入りましょう!」
私がそう促すと芦谷さんはぐっと私の手を引き、ショップの入口のドアを押し開ける。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、芦谷様」
私たちが入ると同時に、スーツを着込んだ店長らしき男の人がそう言い頭を下げる。
芦谷さんはそれを制すると、私の手を繋いだまま店内を回るのだった。