深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





普段私が好んで着ている服の色は、黒、紺、灰色………
とにかく地味で目立たない色が好きだった。



「ほら、これ着てみろよ」


だから芦谷さんに差し出された淡いピンク色のブラウスだったりふんわりとした白のロングニット、細身のジーンズに戸惑い立ち尽くしてしまった。



「私、…に、似合わないですよ」


「見慣れねぇだけだよ。絶対似合うから、な」


芦谷さんは私の背中を押して試着室のドアを閉める。
無理矢理持たされたさっきの服を見つめ、私はのろのろと着替え始めた。


初めて袖を通す明るい色の洋服に、思わず緊張して生唾を飲み込む。
震える手で試着室のドアを開けた私は、ぎゅっと目をつぶって反応を待った。





< 105 / 159 >

この作品をシェア

pagetop