深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
(…あ、れ………?)
ガチャッとドアの開く音がして以来、誰も言葉を発しなくて。
私は不安になってゆっくり頭を上げた。
すると、そこには。
「―――っ、…」
顔を真っ赤にしてこちらを見つめる芦谷さんと、びっくりしたような表情の店員さんたち。
誰も何も言わない状況に耐えられなかった私が試着室に戻ろうとすると、ぱっと伸びてきた腕がそれを制した。
「………かわいい」
床を見たままそうつぶやいた芦谷さんの声が静まりかえった店内に響いて、私は思わず表情を和らげるのだった。