深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「選び甲斐あるなぁ」
あれから、芦谷さんは次々と私の服を選んでいった。
今は仕上げとして靴を選び始めていて、私はその間いすに座って楽しそうな芦谷さんの様子を眺めている。
「楽しそうですね」
「まぁな。好きな女を着飾らせるのが嫌だっていう男なんかいねぇよ」
そう言いながら一足のパンプスを手にこちらにやってくる芦谷さん。
シンプルな黒のそれを私の足下に置くと、彼はその場にしゃがみ込み私を見上げる。
そして、そっと私の足首に触れた。
「貸せ。履かせてやる」
そう言うと私の足をその大きな掌で包むように持ち上げ、足の甲に唇を落とした。