深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
そのままキャンキャンと言い争いを始める二人に頭を抱えた私は、とりあえず仕事をこなそうと席を立つ。
今日中に総務部に提出しなければならない書類があったのを思い出したのだ。
「あ、おい!どこ行くんだ!?」
「…総務に書類置いてきます」
そう言えば納得したように頷く芦谷さんを尻目に私は役員室を出てエレベーターに乗り込む。
総務部で用事を済ませ、役員室に戻ろうとしたときだった。
「………つ、鶴岡さん!」
そこにいたのは見知らぬ男の人。
スーツにつけてある社章から判断するにこの会社の人らしいけど、私には全く見覚えがない人だった。