深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
(あ、―――芦谷さん!)
怖くてたまらなくなった私は目をつぶりその場にしゃがみ込んだ。
きっと芦谷さんはまだユウさんと騒いでいるだろう。助けになんてこないはず。
それでも私は心の中で名前を呼んだ。
「つ、鶴岡さ…?」
そう名前を呼ぶ声が違う。
私の肩に触れる手が違う。
そう思って身体を一層こわばらせたときだった。
「………おい。勤務時間中だろう、油売ってるんじゃねぇよ」
顔を上げると、半澤さんの腕を捻り上げる芦谷さんの姿があった。