深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「環の唇、甘い。会社にいるのも忘れて夢中になっちまったじゃねぇかよ」
我慢出来ねぇ、とつぶやいて私から離れていく直人さんがなんだかかわいくて、私はつい吹き出してしまった。
「直人さん、子どもみたい」
「うっせぇな。………まぁでも、全部環のせいだからな。責任とって俺に甘やかされてろ、とろっとろに甘やかしてやる」
その言葉に、私は一瞬で頭が真っ白になった。
「―――そ、そんなことここで言わないでくださいよ!さ、早く仕事してください!」
「んな照れんなって。あー今夜が楽しみだなぁ〜」
ニヤニヤしながらそう言う直人さんを、私は今日一日直視できなかった。