深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





少し伸びた髪は丁寧にコテで巻かれ、普段全く化粧をしない顔はだんだんドレスに負けないよう色づいていく。
その様子をまじまじと見ながらため息をつくと、そんな私を見逃さなかった直人さんが声をかけてきた。



「なんだ、ため息なんかついて。侑にしてもらってるってのは少々気に食わねぇけど今の環は本当綺麗だぞ?」


「悔しかったら直人もヘアメイクの勉強したら?…でも本当、こんなにメイクのしがいがある子ってなかなかいないから僕も楽しいよ。もう少しで終わるから待ってね」


いつの間には私の右側には直人さん、左側にはグロスを手に持つユウさん。
タイプは違うけど二人だって芸能人もびっくりの容姿だから(ユウさんは現役のモデルさんだし)、そんな二人にほめられてもなんだか素直に頷けない。


それでも鏡に映る私は普段とは別人のようにきらきらしている。
…これなら直人さんの隣に立っても少しは許されるかな?





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