深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「あなた、ご挨拶もなしに急に話しかけたら驚かせてしまうじゃない。…環さん、でよかったかしら?初めまして、直人の母です」
びっくりしている私の手を取ってそう話しかけてくれたのは直人さんのお母さん。
私は慌てて頭を下げると、お返しとばかりに挨拶をした。
「は、初めまして。鶴岡環と申します」
「直人から聞いてたとおりかわいいのね!私、女の子が欲しかったのよ〜。これからよろしくね」
(…これ、から?)
話がよくわかっていない私が、にっこりと笑ってそう話す彼女に手を取られたまま直人さんの顔を見ると、彼はなんだかばつの悪そうな表情をしている。
すると社長が笑い声を殺しながらフォローしてくれた。
「まぁまぁ、詳しくは直人から話があるでしょう。…じゃあ直人も環さんも、侑君も楽しんでいってくれ」