深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





「………環、さぁ」


私がライトアップされた庭を眺めていると、不意にそう呼ばれる。
ぱっと直人さんのほうに視線をやると、なんだか落ち着かない様子でこちらを見ていた。



「なんですか?」


「…今日はさ、実は俺の親に環を紹介したくておまえも連れてきたんだ。実は環を経理から引っ張ってくるときに親父には話しててさ、俺が親にそんな話をすることなんてなかったから、早く会ってみたいって言ってくれてて」


そこまで言うと、直人さんはスーツの内ポケットに手をやって何かを取り出した。
そして私の左手を掴む。



「―――結婚、してくれないか?」





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