深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
そう返事をすると、そっと直人さんの顔が近づいてきた。
何回しても慣れない、甘いキス。
最初は触れるだけだったのに、だんだん私の唇を彼の舌がなぞり上げられると思わず吐息を漏らしてしまって。
「………部屋戻ろう」
直人さんの少し掠れた声を合図に私はいわゆるお姫様抱っこをされてホテルの部屋に戻った。
(直人さん、熱い…)
私に回された腕。
スーツの上からでもわかるくらいの熱と一緒に伝わる、彼の鼓動。
…私はそっと目を閉じてその音に聞き入った。
とくん、とくんと規則的に刻まれる心拍数。
(とろけそう)
部屋につくまで私はずっと、その音を聞き入っていた。