深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
…そう言ったときの彼の呆然とした表情、なかなかの見物だったかもね。
私はそう思いながら再び机に伏せった。
昼休みももうすぐ終わる。少しでも身体を休めて、これから私はこの長い午後を耐えきらなきゃならないんだ。
「わかったら行ってください、ね…」
私がそうつぶやいたときだった。
「―――芦谷直人。俺の名前だ、覚えろよ。…また来る」
彼はそう言い残して私のそばから立ち去っていった。
(もう来なくていいよ)
耳の奥でまだ聞こえる鎖の音に頭を痛めながら、私はそう一人ごちるのだった。