深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
今まで、ここまで寝れない事なんてなかった。
まして目を閉じると聞こえる幻聴なんて未経験で。
身体は確かに限界を訴えていた。
「―――おい。…昼より顔色悪くないか?」
そのとき、不意に耳元で聞こえた声に私の肩が跳ねた。
ばっと振り返るとそこには昼休みに私を訪ねてきた―――芦谷さんが立っている。
「あ〜…、気のせい、ですよ」
「んなわけねぇだろ、そんな青白い面して」
そう言うと彼は私の右腕を掴んで思いっきり高く手を挙げさせる。
されるがまま右腕を挙げさせられた私は、その勢いで立ち上がってしまった。