深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





「可愛くなくたって、なんだっていいですよ!いい加減離して――…」


そう叫んだ瞬間私の膝から力が抜けていった。
自動的に彼に支えられる格好になり、恥ずかしさから顔が熱くなる。



「だから寝てろって!…ったく意地張りやがって」


彼はそう言うと私を抱えてまたソファの上に乗せる。
そしてテーブルの上でほったらかしにされていたマグカップを一つ、私に手渡してきた。



「心配させんなよ。今簡単にメシ作るから、これ飲んでろな?」


まだ湯気の上がるマグカップ。中身はホットミルクで、口を付けるとほんのり甘みがあって。


…眠たくなるような、暖かい味だった。





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