深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
それから待つこと数十分、芦谷さんが運んできたのはトマトソースのリゾットと温野菜サラダだった。
「どうせ大したもん食ってねぇんだろ?残さないで食えよ」
向かい合わせに置かれた皿の前に座ると彼がそう言う。図星をつかれた私は俯いて、小さく手を合わせてからスプーンを動かした。
そうして一口口に含むと。
「おいし…」
「だろ?残すなよ」
その声に素直に頷くと彼はクツクツと笑う。
―――人に作ってもらったご飯なんていつぶりなんだろう。…こんなにおいしいご飯を最後に食べたのいつだっけ。
今自分が独りじゃないことに違和感を感じながら、私はリゾットを完食した。