深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





―――すうすうと、彼女の口から柔らかい寝息が聞こえてきた。


ソファに座り、頭だけを少し傾けているから俺からは顔が見えないけど、どうやら眠ってしまったようだ。
そんな彼女の、―――鶴岡環の姿を見つめる俺の瞳はひどく揺らいでいた。




(こんなになるまで寝れなかったのか…?)


小さくて、ほとんど肉の付いていない細い身体。
少年のような短い髪から覗く白いうなじが妙に色っぽくて、彼女を見下ろしながら俺は生唾を飲み込んでいた。


(………って、何考えてんだ俺!)


思わず赤面しながらため息をつくと、俺は彼女を横抱きにして寝室に運んだ。





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