深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
ぼろぼろと涙を流しながらそう懇願してくる環。
掴まれた手が、痛い。
「―――わぁったよ!ほれ、これでいいか?」
たまらず俺はベッドに潜り込み彼女の顔を自分の胸に押しつけた。すると、彼女の身体からは力が抜けていく。
「よぉく、眠れよ」
その小さな身体を引き寄せて抱き締めてやると、返事の代わりにまたあの穏やかな寝息が聞こえてくる。
こどものように高い体温に、俺もだんだん眠くなってきた。
(………まぁ、いいか)
そう思うと俺もゆっくり微睡んでいく。
気づけば眠っていたわけだけど、その間環を抱きしめた腕を緩めることはなかった。