深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
―――気がつくと、カーテンの隙間から朝を告げる光が差し込んできていた。
まぶたを開くと寝ぼけ眼に映るのは誰かの喉仏だった。
見慣れないそれに頭を上げるも、すぐに後頭部に手を添えられて胸元に押さえつけられる。
「起きたのか…?」
その声に聞き覚えがあった私が恐る恐る視線を向けると、そこには芦谷さんの顔があって。
「え?な、なん、………え!?」
どういうことだ、と言わんばかりにじたばたと暴れてみても芦谷さんの身体はびくともしない。
そうしながら昨夜の記憶をたぐり寄せて、そこで私は昨日眠ってしまったことに気がついた。
(…眠れた、の?)